(LHCアトラス実験オフィシャルブログに掲載しているものの再掲です)

探査機はやぶさ、満身創痍ではありますが、小惑星イトカワからようやく地球に帰ってきました!はやぶさの運用チームの皆様、本当にお疲れ様でした!そしてもう一息、がんばってください!

はやぶさ本体がバラバラになって燃えつきる様子、みなさんもご覧になられたかと思います。それはとてもきれいで、どこか切ないものでした。7年間も一生懸命にがんばってくれたのだから、そのままの姿で戻ってきてほしかったなあ、そのまま再び宇宙の旅に出てほしかったなあ……そう思います。そう思うのですが……一般的な実験では、実験の終了とともに実験装置はお払い箱になってしまいます。分解されて部品の一部は再利用され、残った部分はそのまま廃棄処分です。そう考えると、探査機としてのはやぶさの終わり方、みんなに温かく見守られながら、大気圏へ超高速で再突入するという貴重な実験を行って消えてしまうという最期も、悪くないのかもなあと思います。(もちろんはやぶさほどの実績を出してしまえば、戻ってくれば廃棄などされずに展示してもらえるようになるでしょうけれど。)

と、前置きはこれくらいにして、今回のお話は今までとはちょっと変わって実験装置、加速器についてのお話です。

加速器とは、電気を帯びた粒子(荷電粒子)をその名の通り加速させるための装置です。加速させる粒子には電子や陽電子のような素粒子から、もう少し大きい陽子、さらに大きい原子をイオン化(電気を帯びた状態)したものまでさまざま。ATLAS実験で用いられる加速器、LHCでは陽子の加速が基本にはなりますが、イオン化した重い原子(重イオンといいます)を加速させて実験する計画もあります。イオン化させた原子を加速させる……このフレーズ、最近のニュースでちらっと見ませんでしたか?そうです、はやぶさのイオンエンジンです。

LHCのメインとなる陽子を加速させるときとは異なりますが、イオンエンジンでもLHCで重イオンを加速させる場合でも、原子にマイクロ波(ある波長の光です)を当てて原子の中にある電子を飛ばしてイオン化させ、プラスの電気を帯びた粒子を作ります。その電気を帯びた粒子をマイナスの電気を使って引っ張って加速させる、これが基本の原理になります。(加速器の場合、この方式に加えてさらに加速させるためのシンクロトロンと呼ばれる装置をメインに使っています。)加速器では粒子を加速することが直接の目的になるのに対して、イオンエンジンでは粒子を加速させる反作用の力で推進力を得ることが目的になります。宇宙を駆けたはやぶさと宇宙の始まりを再現しようとしているLHC、その根っこには同じ原理が用いられているのですね。

と、今回は探査機はやぶさの話からむりやり素粒子物理学のお話につないでみました。