J-PARCとは、JAEA(日本原子力研究開発機構)とKEK(高エネルギー加速器研究機構)の共同プロジェクトである大強度陽子加速器施設のこと。簡単に説明してしまうと、陽子を光の速さの99.95%まで加速させることができちゃうすごい施設!陽子を加速していろいろなターゲットにぶつけることで出てくるミューオンや中性子、ニュートリノなどを使って、いろいろな実験をしています。

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以前の記事でJ-PARCでステライルニュートリノを探しているJSNS²実験についていろいろと描かせていただきました。JSNS²実験を端的に説明すると、J-PARCで中性子を作る際に飛び出してくる反ミューニュートリノを使って、未知の素粒子であるステライルニュートリノを探してみよう!という実験です。

JSNS²実験の概要、2個のニュートリノ検出器でニュートリノ振動を探したい!

詳細に関しては、前回の記事を読んでもらえると嬉しいです。

こちらでは、加速した陽子がターゲットに衝突する地点から48m離れた遠くの方の検出器を見学させていただきましたが、今回は24m離れた近い方の検出器を見学させていただきましたので、少しだけご紹介させていただければと思います。

写真で見てみるJSNS²実験(の衝突地点から近い方の検出器)

JSNS²実験のニュートリノ検出器(近い方)。

これが今回見学させて頂いたJSNS²実験の24mの方のニュートリノ検出器です。外に設置されているニュートリノ検出器とは、少し形が異なっていますね。

ニュートリノ検出器をもう少し近くで見たところ。

もう少し近くから見てみた写真がこちら。丸いステンレスのタンクが2層構造になっているのがわかります。

ニュートリノ検出器のかんたんなイメージ図

ステンレスタンクの中身は、以前紹介した48m離れたニュートリノ検出器とほぼ同じ構造になっています。内側のステンレスタンクは3層構造になっていて、外側から順番に、外から飛んできた邪魔になる粒子を区別するための液体シンチレータの層、中性子によって起きる反応を区別するための液体シンチレーターの層、そしてニュートリノを検出するためのガドリニウムを添加した液体シンチレータの層となっています。

また、外側のステンレスタンクとその周りの赤い四角い箱は、内側のタンクの液体シンチレータが万が一漏れてしまっても外に出ないようにするために設置されたもので、これによって安全性が確保されています。

仮置表示…?

赤い四角い箱の中にはいっているのはなんでだろう…と思ったら、このような表示がありました。実はこの検出器、移動させることができるのです。JSNS²実験では、陽子の衝突地点の近くに検出器を設置したかったのですが、物質・生命科学実験施設には十分なスペースがありませんでした。

コマを横に配置してスライドなどに使いやすそうなver.はこちら

そこで目をつけたのが、陽子をぶつける水銀ターゲットをメンテナンスに使うスペースです。メンテナンスをしていない運用中であれば使わないんだし、検出器を設置できるよね!していいよね!と設置させてもらうことにしました。ですが、水銀ターゲットのメンテナンスを行う際には、検出器を別の場所に移動させる必要があります。そのため、この検出器は動かせる構造になっているのです。

検出器を外に出すための搬出口。

ちなみに、この検出器の移動はとてもとっても大変だそうです。まず、中に入っている液体シンチレータのオイル(可燃性)を全部抜きとります。次に、設置されている3階から1階へクレーンで慎重に運び出し、トラックに積んで別の場所に運ばれていきます。

これは検出器を下から見たところ。鉛のブロックが見えますが、これは1階にある陽子の衝突地点から直接飛び込んでくるいろいろな粒子が検出器のノイズにならないようにするためのシールドになっています。ちなみに、検出器を移動させるたびに鉛のブロックを手作業で床に敷き詰め、その上に検出器を設置しているそうです。とても大変。

写真で見てみるJ-PARCの中性子用ターゲット(の周辺)

JSNS²実験の写真はこれくらいですが、その近くにあるJ-PARCの中性子を作るための水銀ターゲットの場所も見学させていただきました。

中性子用のターゲットがある場所。

JSNS²実験の検出器が設置されている場所のすぐ隣りにある、水色の八角形のコンクリートの蓋。この蓋の下、約10mのところで陽子と水銀ターゲットを衝突させています。(もちろんこのときは運転していません。)

JSNS²実験の検出器との位置関係。

水銀ターゲットの蓋とJSNS²実験の検出器の位置関係はこの写真のような感じです。JSNS²実験の検出器があるのが建物の3階、水銀ターゲットはこの蓋の下、1階に設置されています。

陽子の通り道から水銀ターゲットの衝突地点まで、とても分厚いコンクリートの蓋の上から動画も撮ってみました。

水銀ターゲットが設置されている場所。

この写真は先程の場所から1階まで降りてきたところです。この白い壁の向こう、四角い窓の向こうに見える暗いオレンジ色の場所に水銀ターゲットが設置されています。

作業用に遠隔操作をするためのアーム。

陽子がぶつかり続けている水銀ターゲットは放射化(放射線が出る状態)されていてとても危険です。そのため、ターゲットの設置された部屋は分厚い壁で完全に隔離されており、作業用の覗き窓もとても分厚い鉛ガラスで作られています。必要な作業は、このような遠隔操作用のアームを使って行っているのです。

今回もJSNS²実験のいろいろをご説明してくださったKEKの丸山さんには改めて大変お世話になりました。お忙しいなか時間を割いていただき、本当にありがとうございます!

JSNS²実験のwebサイトはこちら。
https://research.kek.jp/group/mlfnu/index.html

J-PARCのwebサイトはこちら。
https://j-parc.jp/c/

付録(マンガの横長ver.)

スライドなどに使いやすそうなレイアウトのマンガです。