宇宙からやってくるニュートリノを観測するために、南極の地面の下の巨大な氷を実験装置にしてしまう実験、IceCube(アイスキューブ)

ひっぐすたんでもたびたび紹介させていただいています。

宇宙を観測している他の装置たちとコラボレーションしてみたりで大活躍!

そんなIceCubeさん、装いをちょっぴり新たにしたIceCube-Gen2としての実験の準備の真っ最中です。

このIceCube-Gen2の前段階となるIceCubeのアップグレードでは、ニュートリノが氷の中の原子にぶつかって出てくる粒子が放つ光を検出する装置に、千葉大学が開発したD-Eggを一部採用しています。

従来のIceCubeで使われていた光の検出器「DOM」とIceCube-Gen2で使う予定の検出器「D-Egg」の比較。光電子増倍管(フォトマル)が2個入りです。

今回、このD-Eggの実機を千葉大学 ハドロン宇宙国際研究センターで見学させていただきました!

ICEHAPへ行ってきた!

千葉大学 西千葉キャンパスにあるハドロン宇宙国際センター(ICEHAP)はIceCubeで研究を行っているニュートリノ天文学部門とプラズマ宇宙研究部門の2つの研究部門がありますが、今回はニュートリノ天文学研究室にお邪魔してきました。

千葉大学 西千葉キャンパス、のどかです。

実験室の入口にはIceCubeさんがいました。

IceCubeさんがおでむかえ。

こちらがハドロン宇宙国際センター ニュートリノ天文学研究室です。

いかにも研究室的なところなのですが、部屋の中央に段ボール箱がたくさん並んでいます。実はこのはこの中にD-Eggが!

たくさんのD-Egg!

(21.08.30 写真を少しきれいなものに差し替えました)

IceCube-Gen2の前段階となるIceCubeのアップグレードでは、D-Eggが300個以上使われる予定になっています。そのすべてがここの研究室を経由して南極に向かっていくため、たくさんのD-Eggが研究室に滞在しているのです。

普段は使っていない部屋にもたくさんのD-Egg。
さらにはサーバールームにまでD-Eggが!

D-Eggで研究室がいっぱいになってしまう日はそう遠くないのかもしれません(?)

これがD-Egg!

たくさんある段ボール箱を開けてみると。

これがD-Egg!

D-Eggが入っていました。このままではその全貌がわかりづらいので、試験用に外に出したものも撮影させていただきました。

お手製の木製の台に乗っているD-Egg。

卵型のガラス容器に、上と下の2箇所に光を検出するための光電子増倍管、中央に信号を読み取るための基板が組み込まれています。細いワイヤーは吊るすためのもの、太いケーブルは電源と信号をやり取りするためのものです。

写真では少しわかりづらいかもしれませんが、光電子増倍管とガラス容器の間には透明のゲルのようなものが詰められていて、せっかく容器に入ってきた光が反射して外に出てしまうことを防いだり、光電子増倍管を容器内に固定する役割をしています。

上から覗いてみると、光電子増倍管の光を検出するための部分が見えます。

この中央の黒い部分に光が飛び込むと、光が電子に変換・増幅されて、最終的に電気信号になります。

こちらは中央部の基板。IceCubeのプリントがかっこいい!

実際に南極の氷に埋めるときには、この写真のようにワイヤーでD-Eggを数珠つなぎにして氷の中に降ろしていきます。

D-Eggの性能試験は氷点下40度で

D-Eggは南極の氷の中に埋めて使うものなので、とてもとっても寒い環境でもしっかり動作することが求められます。そのため、性能試験は大きな冷凍庫の中で行われます。

D-Eggを試験するための冷凍庫。ケーブルがいっぱいはみ出しています。
中の温度はマイナス40度!寒い!

この冷凍庫の中には、試験をするために冷やされたD-Eggがずらり。

それぞれの箱の中にD-Eggが1つずつ入っています。

ちょうど試験をしていないタイミングだったので、箱を開けてもらいました。ひえひえのD-Eggです。

キンキンに冷えたD-Egg(マイナス40度くらい)
霜を指で落とした結果、なんだかちょっと汚い見た目になってしまったD-Eggとひっぐすたん(マイナス40度くらい)

南極という極端な環境下で、さらに氷に埋め込んだら取り出せないような状況で実験するのですから、しっかり1台1台性能試験を行っています。実験はたいへん。

搬入されるD-Egg

実は見学させていただいたこの日に、新しく製造されたD-Eggが搬入されてきていました。

トラックで運ばれれてくるD-Eggいりの16箱の段ボール箱。

この箱のひとつひとつにD-Eggが入っています。だいたい25kgくらいでしょういか。トラックから降ろされたこの段ボール箱を部屋まで運ぶのは、研究者です。この日のD-Eggは4階にある空き部屋に運ばれていったのですが、とてもとても重労働。研究者には体力がだいじです。研究者になりたい人はぜひ体力もつけてください、絶対に役立ちます。

おまけの写真

研究室ってこういうものだよねーと思いながら撮った写真や、うちのかわいいひっぐすたん写真をちょっと並べておきます。

研究室あるある

D-Eggの台になっているのは洗面器。実験に使えそうなものは何だって使います。

洗面器に乗っかったD-Egg。

実験室のテーブルの上の様子。クッキングシートもいろいろと使い勝手がいいです。 実験に使えそうなものは何だって使います。

どこの実験室も机の上はこんな感じな気がします。

(21.08.30 写真を少しきれいなものに差し替えました)

段ボール箱の中に入っているのはD-Egg。段ボール箱の上から遮光シートをかぶせて、性能試験をします。 実験に使えそうなものは何だって使います。

便利ですよね、段ボール箱。

研究室にはだいたいある気がする、電子レンジと冷蔵庫。これは実験に使うのではなく、研究室の人が飲食するのに使います。とても大事。

これは実験用ではありません。

ひっぐすたん

以前、文部科学省に置かれていた気がするIceCubeの模型とIceCubeさんのパネル。すごく良く出来ています!

IceCubeの構造がよくわかります。

ICEHAPのカップにはいったコーヒーとひっぐすたん。

ロゴかわいい。

最後に

これからのIceCube

IceCubeのアップグレードに向けてたくさんのD-Eggを準備していますが、コロナ禍ということもあり南極への装置の搬送や建設も予定通りにはいかないようです。そんな状況でも頑張っているICEHAPの研究者のみなさん、はやくパワーアップした実験が始められることを願っています…!

またD-Egg以外のIceCube用の検出器の研究開発も行われています。下の写真は新しく開発している検出器用の光電子増倍管です。

小さめの光電子増倍管にジェルが乗っかっています。
ジェルはD-Eggで使われているものと同じもの、ぶよぶよ。

この小さめの光電子増倍管を1つの球体にたくさん詰めて、D-Eggよりも広範囲の光を見ることができる検出器を研究開発しています。

お礼

今回のレポートを描くにあたって、千葉大学 ハドロン宇宙国際センターのColton Hillさん、清水さん、高橋さんには大変お世話になりました。お忙しいのにもかかわらず時間を割いていただき、本当にありがとうございます!

Colton Hillさんとひっぐすたん
清水さんとエナジードリンク(写真を撮りそこねました…)
この日は30度超えの暑さだったため冷凍庫の中と外で70度の寒暖差に襲われることになった、ひっぐすたんとひっぐすたんの中の人

千葉大学 ハドロン宇宙国際センターのサイトはこちら。
http://www.icehap.chiba-u.jp/