今回の記事は東京大学宇宙線研究所附属 神岡宇宙素粒子研究施設のサポートを受けて描かせていただいております。

みんな大好きスーパーカミオカンデちゃん、その後継になるハイパーカミオカンデちゃんの建設予定場所にお伺いしてきました。

スーパー?ハイパー?カミオカンデ!

素粒子のひとつであるニュートリノを観測するためにとてもとっても大きな水のタンクを備えた実験装置、スーパーカミオカンデ。岐阜県飛騨市の神岡鉱山の地下1,000mにあります。

その大きさは直径39.3m、高さ41.4m、約5万トンの水が入っています。その大きなタンクを使ってニュートリノを観測することで、ニュートリノが質量を持っていることを発見したり、CP対称性と呼ばれるものが破れていることを見つけられそうだったりで現在でも大活躍中です。

スーパーカミオカンデちゃんがニュートリノを見つける様子の説明はこのあたりの記事で見てみてください。

こちらはスーパーカミオカンデちゃんのタンクの中に入ったときのレポートです。写真がとっても綺麗なのです。

そしてそんな大活躍のスーパーカミオカンデの後継となるのがハイパーカミオカンデ

カミオカンデ、スーパーカミオカンデ、ハイパーカミオカンデの比較図

スーパーカミオカンデちゃんの前に活躍していたカミオカンデも含めた比較図です。単純な体積でスーパーカミオカンデちゃんの約5倍、ニュートリノを見つけるのに使える有効体積という考え方では約10倍にもなります。ハイパーカミオカンデちゃん、やはりでっかい。

この記事はそんなでっかいハイパーカミオカンデちゃんの成長記録の一部になる予定です。

建設予定地まで坑道を通って行ってきた

カミオカンデとスーパーカミオカンデは岐阜県飛騨市神岡町にある池ノ山の鉱山に建設されていましたが、ハイパーカミオカンデはちょっと離れた鉱山に作られる予定になっています。どちらの鉱山も神岡鉱業という会社が管理しています。

神岡鉱業の事務所からの工場の眺め
途中で立ち寄った神岡鉱業の事務所からの眺め。工場萌えな人にはとってもたまらんと思います。

ということで、神岡鉱業の木村さん(先日放送されたブラタモリに出ていた方です。どこに行ってもブラタモリ見たよ!って言われるって言ってました)に連れられて、ハイパーカミオカンデの建設予定現場まで出発です。

坑道の入り口

坑道の入り口はこのような感じ。ここを車に乗って入っていきます。当たり前ですが真っ暗です。怖い。

また坑道は基本的に未舗装です(ちなみにスーパーカミオカンデへアクセスするための坑道はちゃんと舗装されています)。結構な勢いでガタガタ揺れながらズンズン奥に進んでいきます。怖い。

ある程度奥まで進んだところで車から降りて、徒歩でハイパーカミオカンデの建設予定場所まで向かいます。

坑道の様子

写真があまりにブレブレでなんだかわからない気がしますが、地面が水浸しの真っ暗な坑道の中を歩いていることくらいはわかってもらえると嬉しいです。

動画も撮っていたのですが、こちらだと雰囲気などが良くわかりそうです。光源はないので、手に持っている懐中電灯がすべてです。うっかり落としたら大変です。

坑道の様子、先が明るいです

真っ暗な坑道をしばらく歩くと、明るく照らされている場所が見えてきました。なにかの作業をされているようです。明かりが眩しい。

広い空間

もう少し進むと、ちょっと開けた場所に出ました。

360度で見えるような写真で撮影してみましたので、ぜひグリグリ見渡してみてください。

天井に書かれた赤い丸

広い空間で上を見上げてみると、丸くペンキで描いた中央になにか貼ってあります。

「HKセンタ」と描かれた紙

HKセンタ。つまりハイパーカミオカンデの中央です。

実はここがハイパーカミオカンデのてっぺんに当たる部分なのです。できたてほやほやって感じがとてもします。

ハイパーカミオカンデ概念図
(c) Hyper-Kamiokande Collaboration

ちなみにこちらがハイパーカミオカンデの概念図です(ハイパーカミオカンデのサイトからお借りしました)。これを見ると、改めて大きなものだなあと思います。そして写真の赤い丸が、これのてっぺんの部分になります。

今頑張っているのは地質調査

ハイパーカミオカンデのてっぺんの部分周辺でいろいろな方が作業をされているのですが、実はこの時点ではハイパーカミオカンデのタンクのための空洞を作ろうとしているわけではありません。

地質調査をしているのです。

ハイパーカミオカンデのとても大きな水のタンクを建設するにあたって、建設場所の地質はとても大事です。しっかりとした硬い場所でないと大きな空洞が維持できません。

坑道の壁面の様子

例えば、これは坑道の途中で壁面を撮影した写真ですが、中央に色の違う岩石が見えています。この部分、とっても脆いんです。

壁面を指で触っている様子

触ってみるとボロボロ壊れてしまいます。硬いと言われている神岡の地質ですが、このように脆い部分もあるのです。

そんな地質をしっかりと調べるための、地質調査。

床を切り出した様子

こんなふうに地面の岩石を切り出して、せん断強さ(どれくらい力をかけると横にずれて壊れちゃうのか)を測定してみたり。

上下に力をかけている様子

上下に力をかけてどれくらい歪むのかを測定してみたり。

ボーリングの孔

丸くて深そうな孔を掘ってみたり。これはボーリング調査といって、円筒形状に長く孔を開けて、その岩石のサンプルを採取しています。

派手ではないですが、これから先の建設にあたって、とっても大事な作業をしているのです。

いろいろな写真

ちょっと真面目な写真が続いたので、口直しにいろいろな写真を載せてみておきます。

坑道の壁面がキラキラしている様子

坑道の壁面を懐中電灯で照らしてみると、キラキラ光ります。鉱山で採れる金属だと思います。ここは鉱山の中なんだなあという気持ちにさせてくれます。

坑道を流れる地下水

坑道に流れている地下水です。めちゃくちゃに透き通ってます。触ってはいませんが、とっても冷たそう。

作業する人たちの日用品など

鉱山の中で作業をする人たちの荷物置き場と(おそらく)休憩場所。真っ暗な穴の中でも生活感があってとても安心できます。

新しい坑道を作ろう

鉱山の中でのお話はここまでなのですが、ハイパーカミオカンデ建設のお話はもう少し続きます。

ハイパーカミオカンデの水タンクを建設するためには、鉱山の中にとても大きな空洞を作る必要があり、その空洞を作るにはそこにあった大量の岩石を鉱山の外に出す必要があります。

実はハイパーカミオカンデのための大きな空洞を作る速さを決めるのは、穴を掘る速さではなく、岩石を排出する速さなのです。先程の入り口からでは、とてもじゃないけれど搬出が追いつきません。

ハイパーカミオカンデにアクセスする新しい坑道の概念図
スケール感は全く違いますが、こんなイメージ

そこで山の別のところから新しい坑道を掘って、この坑道を使って岩石を外に搬出します。

ハイパーカミオカンデの入り口予定地

具体的にいうと、この写真のブルーシートに覆われている場所からです。ここにハイパーカミオカンデへの入り口ができる予定です。ドキドキですね。

このまわりでは、搬出した岩石を運び出して別のところへ持っていくためのスペースを整えていたりもしています。ハイパーカミオカンデを建設するにあたっては、そのような場所の整備も必要なのです。とってもたいへん。

さいごに

十分に大きいと思っていたスーパーカミオカンデよりも、さらに大きなハイパーカミオカンデを建設するにあたっては、とてもとても多くの作業量が必要となります。2020年に建設を開始して、実際にニュートリノの検出を始めるのが2027年の予定。こんなに大きな実験装置が作られていく様子を、ぜひぜひ興味を持って見守ってあげてください。

今回にレポートを描くにあたっては、東京大学宇宙線研究所の塩澤さん(ハイパーカミオカンデの実験代表者です)と武長さん、神岡鉱業の木村さんには大変お世話になりました。お忙しいのにもかかわらず時間を割いていただき、本当にありがとうございます!

ハイパーカミオカンデの入り口予定地に、ひっぐすたんのぬいぐるみ

建設が進んだら、また日記にしたいですね!

東京大学宇宙線研究所付属神岡宇宙素粒子研究施設 ロゴ

東京大学宇宙線研究所附属神岡宇宙素粒子研究施設のサイトはこちらから。ひっぐすたんのイラストが使われているニュートリノクイズなんかもあったりします。

https://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/