【今回の記事は東京大学宇宙線研究所附属 神岡宇宙素粒子研究施設のサポートを受けて描かせていただいております】
みんな大好きスーパーカミオカンデちゃん、その後継となるハイパーカミオカンデちゃんの建設予定場所に改めてお伺いしてきました。
第1回、第2回のレポートはこちら。
タンクの空洞へアプローチする坑道を掘ろう
現在、ハイパーカミオカンデのタンクを建設する予定の場所にアクセスするための坑道を掘っています。
今回伺った2022年6月の時点で、約1900mのアクセス坑道はすでに完成していて、そこからハイパーカミオカンデの建設予定場所へ上から下からアプローチするための坑道(アプローチ坑道)を掘り進めていました。
この模型は工事を担当している鹿島建設さんが作成したハイパーカミオカンデの全体イメージを3Dプリンタで出力したものだそうです。こうなっているとイメージしやすいですね。
約1900mのアクセス坑道の先に、1号アプローチ坑道と4号アプローチ坑道に分岐、それぞれがハイパーカミオカンデのタンク建設場所の上部と下部に到達するという構造になっています。
今回はアクセス坑道を抜けて、1号アプローチ坑道と4号アプローチ坑道の最深部に行ってきました。
坑道最前線
アクセス坑道・アプローチ坑道の様子
アプローチ坑道の途中までは自動車に乗って移動します。
前回の日記ではアクセス坑道の入口部分しか完成していませんでしたが、今回伺った時には車で移動できるような立派な坑道になっていました。
坑道に入ってから1900mほど進むと、アクセス坑道とアプローチ坑道の境界部分に到着します。それっぽい看板が掲げられていました。
この先でアプローチ坑道は1号と4号に分岐するため、その両方に空気を送るためのパイプも2本に分岐しています。
ここが1号アプローチ坑道と4号アプローチ坑道の分岐部分です。1号のほうはタンク上部に向かうために上り坂に、4号の方はタンク下部に向かうために下り坂になっています。
また分岐の少し手前、坑道から少し脇に入ったところに「火」と書いてある青い電話ボックスくらいの大きさの箱が設置されています。その中には…
発破の際に使うスイッチがありました。
アプローチ坑道最深部
分岐部分から1号アプローチ坑道を登っていくと、行き止まりのようなところが見えてきました。
ここが1号アプローチ坑道の最深部になります。
もう少し近づいてみると瓦礫の奥に、他の壁面のようにコンクリートが吹きつけられていない素の壁面が見えてきます。
落ちている瓦礫はとても硬そうです。岩石には詳しくないのですが、これが飛騨片麻岩と呼ばれる岩石なのでしょうか。
その周りの壁面を見てみると、細い糸のようなケーブルが張られていました。
細いケーブルは途中で太いケーブルに繋がれています。これで爆薬を爆破するための信号を送っているようです。
ここで分岐の部分まで引き返して、今度は4号アプローチ坑道を歩いてみます。
分岐部分から4号アプローチ坑道の最深部までを歩いてみたところは動画に撮ってみました。機械音がうるさいので注意してください。
こうして到着した4号アプローチ坑道の最深部がこちらです。1号アプローチ坑道とは違って、壁面はコンクリートで吹き付けられています。これは爆破して掘り進めたあとにコンクリートを吹き付けて一度固定してしまうからだそうです。穴を掘り進める際には、コンクリートに穴を開けて爆薬を仕掛けます。
坑道が貫通しました
お伺いしたのが2022年6月上旬だったのですが、6月23日には1号アプローチ坑道がタンクの上部に到達しました。
タンク上部にはすでに別のルートから調査のための坑道が掘られていましたので、この写真のような「貫通!!」みたいなちょっとかっこいいシーンになっています。
こちらは公式でもニュース記事になっていますので、ぜひ見てみてください。
https://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/news/detail/870/
とても余談になりますが、この貫通の際の発破のときにタンク側の空洞にカメラを設置していたそうです。とってもかっこいい動画が撮れる!ってドキドキしていたのですが、カメラに岩が直撃して壊れてしまったそうです。oh…
いろいろな写真
ハイパーカミオカンデへの坑道の入口ですが、その上を見てみると…
日本酒の瓶が供えられていました。剣菱っぽい。
坑道でなにかあったときのための避難袋。安全は大事です。
坑道内の送風機の近くには集塵機が設置されているのですが、そちらで集められた塵の写真。坑道内の環境改善に集塵機が大活躍しています。
岐阜県飛騨市神岡町東茂住に東京大学宇宙線研究所付属 神岡宇宙素粒子研究施設があるのですが、新しい建物ができていました。手前にある工事現場にありそうな建物がもともとの施設、奥にあるきれいな建物が新しくできた施設です。
神岡へは富山空港からレンタカーで向かったのですが、その途中の道の駅 細入で買ったますの寿司。とてもおいしい✨
最後に
これからのハイパーカミオカンデ建設
アプローチ坑道が完成すると、いよいよハイパーカミオカンデのタンクの掘削が始まります。まずは高さ21mのタンク上部のドームの掘削です。
現在の空洞を拡張する形でタンク上部のドームの掘削が終わると、その後に高さ73m、直径69mのタンク部分の空洞を上から下に向かって掘削が行われます。ここで掘削して出てきた岩石は下の4号アプローチ坑道、アクセス坑道を通して外に排出されていくことになります。タンク上部のドームの掘削は約1年で終了し、その後1年かけてタンク部分の空洞の掘削が行われる予定になっています。
お礼
今回もレポートを描くにあたって、東京大学宇宙線研究所の浅岡さん、井下さん、武長さん、鹿島建設株式会社の日野さんには大変お世話になりました。お忙しいのにもかかわらず時間を割いていただき、本当にありがとうございます!
東京大学宇宙線研究所附属神岡宇宙素粒子研究施設のサイトはこちらから。ひっぐすたんのイラストが使われているニュートリノクイズなんかもあったりします。
https://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/
素粒子はかわいい。素粒子のイラストやマンガを描いています。博士(理学)