宇宙からはいろいろなものが地球に飛んできています。陽子だったりニュートリノだったり重力波だったり。その中でも一番メジャーなものが光です。光には波長というものがあって、その波長ごとに目に見える可視光から赤外線や紫外線、ガンマ線などと呼ばれています。そのそれぞれで宇宙を観測していたりするのですが、その中でもあまり進んでいないのが「MeVガンマ線」と呼ばれる光の観測です。宇宙からのMeVガンマ線をしっかり観測することは、宇宙線の起源やダークマターの正体などの宇宙のいろいろな謎の解明につながっていくと考えられています。


この宇宙から飛んできているMeVガンマ線をがんばって精度良く観測しちゃおうという実験、それが京都大学で行われているSMILE(Sub-MeV gamma-ray Imaging Loaded-on-balloon Experiment)です。そしてこの子がSMILEさんです。

 


SMILEは「電子飛跡検出型コンプトンカメラ」と呼ばれるカメラを使い、宇宙から飛んできているMeVガンマ線を観測します。飛んできたMeVガンマ線がカメラの中にあるガスの分子に衝突したときに出てくる電子と弾き飛ばされたガンマ線、この2つを捕まえることで、MeVガンマ線の飛んできた方向やエネルギーなどの情報を得ることができるのです。(ちなみにここでMeVガンマ線を一度分子に衝突させて観測するのは、MeVガンマ線とそうじゃないものを区別するため、MeVガンマ線に関するより多くの情報を得るため、などなどの理由があったりします。)

 


ちなみにこれが実際にSMILEに使われるカメラの写真。カメラなんて名乗っていますが、箱にしか見えませんね。

 

SMILEは少しでも宇宙に近いところから観測したいので、気球に乗って観測を行います。実際にSMILE-Iとして2006年に、気球に乗って空から宇宙の観測を行いました。

 

提供:京都大学 SMILEグループ

自慢のカメラをタンクに入れて。

 

提供:京都大学 SMILEグループ

気球にくくりつけて出発!

 

提供:京都大学 SMILEグループ

そして海に着水。高度32~35kmで、約3時間のMeVガンマ線の観測に成功しました。

次に予定されているSMILE-IIではカメラをパワーアップさせて、MeVガンマ線をいっぱい出している天体を撮影しようとがんばっています。将来的には長時間飛ぶことができる南極や北極で気球に乗せたり、さらには宇宙に飛び出して衛星に乗せたり、いろいろと企んでいます。

そしてこのSMILEに搭載されている電子飛跡検出型コンプトンカメラですが、宇宙観測だけではなく、身体の中を覗いたりするための医療用や放射線を観測するための環境モニタリング用などへの応用が期待されていたりします。まさに自慢のカメラ!

 

京都大学のSMILE実験のwebサイトはこちら。

 

このSMILEさんは京都大学のSMILEグループのご依頼でデザインさせていただきました。ありがとうございます。このようなご依頼がありましたら遠慮なくぜひぜひ。