アルゴンを使った大きな検出器を作ってニュートリノを見てみたいなぁ、っていう4コママンガ。

 

素粒子を検出する方法はいくつもありますが、使っている原理はだいたい同じものです。なにかにぶつけて、光や荷電粒子を出させて、それを検出するのです。例えばスーパーカミオカンデであれば、ニュートリノが水に含まれる原子核にぶつかって電子やミューオンが出てくる、それが出すチェレンコフ光という光を光電子増倍管と呼ばれる光検出器で検出します。

今回紹介するタイム・プロジェクション・チェンバー(TPC、Time Projection Chamber)も基本的な原理は同じですが、ニュートリノと原子核の衝突からでてきた電子やミューオンなどの荷電粒子がつくる電荷信号を使った検出器になります。

そのおおざっぱな仕組みを見てみましょう。特定の気体や液体を詰めた箱の中に荷電粒子(電気を持った粒子)が飛び込むと、その気体や液体の原子にぶつかって進んでいきます。その際、荷電粒子のエネルギーを使って、その飛跡に沿ってマイナスの電気を持った電子とプラスの電気を持ったイオンをたくさん作っていきます。

ここで箱の片方の面にプラスの電気を、反対の面にマイナスの電気を引きつけるように電圧をかけてあげると、荷電粒子にたくさん作られた電子は一定方向に引っ張られていきます。この電子の流れを電気信号として捕まえてあげることで、荷電粒子が飛んだ!という記録をリアルタイムに取ることができるというわけです。さらにプラスの電気の面のどこに電子が来たか、またどれくらいの時間差があるか、という情報があれば、箱のどこを荷電粒子が飛んだかという3次元の情報も得ることができます。

このように荷電粒子の飛跡がわかってしまうTPCという検出器ですが、実は電気を持っていないニュートリノのような粒子の検出にも使うことができます。素粒子の検出の原理を思い出してみましょう。なにかにぶつけて光や荷電粒子を出させる、です。飛んできたニュートリノがTPCに入っている気体や液体の原子の原子核にぶつかったときに出てくる、電子やミューオンのような荷電粒子を検出すればいいのです。

 

こんな便利な検出器TPC、いろいろな詰め物のものが開発されて実際に使われているのですが、今回は高エネルギー加速器研究機構で研究開発が行われている液体アルゴンを使ったTPCを見学してきました。


この大きなステンレスの容器の中にアルゴンTPCが組み込まれています。残念ながら見えません。


上の部分を魚眼で撮ってみました。TPCの中に液体になるくらいに冷え冷えのアルゴンを入れるために複雑な配管がなされています。配管萌えの人垂涎の写真。


荷電粒子によって作られた電子を読み出すためのパーツ。格子状になっていてどの部分に電子が来たか、つまり荷電粒子が通ったかわかるようになっています。


このステンレスの容器の内側は真空になっているのですが、真空の部分から電源や信号を取り出すために蓋の部分にこのようなコネクタが付けられています。本筋とは関係ないのですが個人的に好きなパーツなので。

またここでは、気体と液体アルゴンを使ったTPCの開発も進められています。液体のアルゴンの中を通過した荷電粒子が作った電子たちが電圧で上に移動、気体のアルゴンを通過して増幅されて電気信号になります。密度の高い液体でたくさん反応を起こしてたくさん電子をつくり、気体で信号もさらに増幅されて、まさに2つの良いとこ取り!なのです。

 

今回は高エネルギー加速器研究機構の坂下さまのご協力を頂きました。本当にありがとうございます!

高エネルギー加速器研究機構の液体アルゴンを使ったTPCについてのwebはこちら
http://rd.kek.jp/project/LAr/index_j.html
http://research.kek.jp/group/neutrino/index-j.html

 

こちらのマンガや記事は新学術領域研究 ニュートリノフロンティアの融合と進化のサポートを受けて描かせていただいております。