ミューオンで隕石を調べる!

去年の年末のお話になるのですが、大阪大学核物理研究センターの記者会見で使われたスライドにひっぐすたんの標準模型図を使っていただいたようで、関西のNHKのニュースでババンッと大写しになったようです。

記者会見の内容はこちら。
http://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2017/20171113_1

この記者会見ですが、「MuSIC(MUon Science Innovative muon beam Channel)という装置を使って作ったミューオンで、隕石を壊すことなくその成分を分析したよ!」というものでした。ミューオンに隕石にワクワクするような言葉が並んでいますが、これは「物質にミューオンをぶつけてそこから出てくるX線(光)のエネルギーを調べると、その物質がどんな種類の原子でできているかわかっちゃう!」ことを示しています。

なんかやっぱりすごそうですね。簡単にその原理や便利なところを知ってみちゃいましょう。


MuSICの写真。オレンジ色の装置の中央にあるパイプの中をミューオンが走り抜けます。写真提供:大阪大学核物理研究センター

 

ミューオンで成分を分析する原理

ミューオンが分析対象に照射されてその内部にある原子にぶつかると、その原子を構成する電子のように原子核の周りを回ろうとします。ミューオン原子!

ですがこの状態は長持ちせず、もう少しエネルギーに低い安定な状態になろうとします。(わたしたちが立っているより寝ている方が楽、みたいなものです。)その時に余ったエネルギーをX線として外に放射するのですが、このX線のエネルギーはその原子の種類によってピッタリ決められています。炭素原子ならこのエネルギー、酸素原子ならこのエネルギー、といった具合です。この飛び出してくるX線のエネルギーを測定することで、分析対象がどのような種類の原子で構成されているか、調べてしまうのです。

 

ミューオンを使うと有利なこと

似たような分析方法はミューオンではなく電子やX線でも行なうことができるのですが、電子に比べてミューオンのほうが有利な点が2つあります。ひとつはミューオンのエネルギーを調整することでどれくらい物質を通り抜けるかを調整することができる、つまり分析対象のどの部分の成分を調べるということができるところ。

そしてもうひとつが原子から出てくるX線のエネルギーが電子やX線を使った時と比べてとても大きいところ。出てくるX線のエネルギーが大きいと物質を透過する能力が大きくなるので、分析対象が多少大きいものだったとしても、深い部分の成分を調べることができちゃうのです。電子では表面から数μmしか分析できなかったところ、ミューオンでは表面から数cmの成分を分析することが可能になります。このミューオンの利点によって、隕石全体の成分を分析することができたのです。

この技術によって、ある程度の大きさのある貴重なものを傷つけること無く成分を調べることができるようになると期待されているのです。ミューオン非破壊分析!

 

そんなステキなMuSICなのですが、実は以前ご紹介したCOMETちゃんの元となっています。

COMETちゃんはミューオンから電子に変化する現象を見つけるためにたくさんのミューオンを必要とするのですが、このMuSICではたくさんのミューオンを作るための新しい装置を開発してきました。この装置をJ-PARCの大強度陽子加速器と組み合わせることで、COMETちゃんに必要なたくさんのミューオンを作ってあげることができるようになったのです。MuSICはCOMETちゃんの生みの親、みたいな感じでしょうか。

そんなMuSIC実験についてはこちら。
http://www.rcnp.osaka-u.ac.jp/RCNPhome/music/