【今回の記事はこのブログみたいな記事を本にしてしまった「宇宙までまるわかり!素粒子の世界」の一部を抜粋して、ブログ用に再構成したものになります】
地下にある“望遠鏡”
東京大学の本郷キャンパス、とある建物の地下2階には太陽を見るための望遠鏡が設置されています。地下に望遠鏡なんてさっぱり意味がわかりませんが、ここで見るのは光ではありません。太陽から飛んできているはずのダークマターの候補の一つ、「アクシオン」を見るための望遠鏡なのです。(アクシオンに関する説明はここらへんでどうぞ!)その名もTokyo Axion Helioscope、愛称をSumico(すみこ)と言います。ヘリオスコープは太陽を見るための望遠鏡という意味ですので、東京アクシオン太陽望遠鏡といったところでしょうか。
この太陽望遠鏡すみこ、さながら巨大な大砲のようにも見えます。この「砲身」を太陽に向け続けるように動かしています。そしてこの「砲身」の中には強力な超電導磁石が組み込まれています。アクシオンは「磁力のあるところにいると光に変わってしまう」という性質を持っているのですが、これを利用して太陽から飛んでくるアクシオンを光に変えて、その光を検出するのです。今までのダークマター探索実験ではニュートラリーノを見つけようとしていたのでこのような方法は取れませんでしたが、アクシオンならこのような方法を使うことができます。
ライバル登場、CAST!
どんな素粒子実験もひとつのグループだけが行なっているということは少なく、この東京実験にもライバルが現れました。それが今までにもさんざん出てきているヨーロッパはCERN(欧州原子核研究機構)が作り上げた太陽望遠鏡、CAST(CERN Axion Solor Telescope、キャスト)です。このアクシオンを見つける実験、磁力が大きいほど、砲身が長いほど、アクシオンが検出しやすくなるのですが、CASTではヒッグス粒子で有名になったでっかい加速器LHCで使っていた超電導磁石のおさがりを使って実験を行なっています。世界最強の加速器LHCの超電導磁石です。とても強力です。なにそれずるい。そういうわけで、どちらも今のところアクシオンを見つけたような兆候はないのですが、先行するすみこを強力なCASTが追いかけると言った状況が続いています。
CASTのキャラクターはCASTホームページにもある公式?のものです。超電導磁石が生み出す磁場の様子を擬人化したもののようですが…同じ擬人化と言えども、やはり文化によってそのセンスが違うようです。 日欧擬人化対決。
Tokyo Axion Helioscope実験ホームページはこちら。
ちなみにこの公式のキャラクターですが私が大学院時代に描いたものです。この子が博士論文の表紙を飾っていました。このころから実験装置擬人化を企んでいた様子。
素粒子実験装置をとりあえず擬人化して紹介してしまおうなこの企画、こっそり乗っていただける実験ご担当者様、ご連絡お待ちいたしております。
【こんな感じで素粒子実験を紹介してます。実験装置擬人化流行れ】
素粒子はかわいい。素粒子のイラストやマンガを描いています。博士(理学)