星を観測する天文台って、明るい市街地から離れた自然に囲まれた場所にあるもの…そんなイメージがありますよね。ところが実は、東京の渋谷からわずか2キロほどの、キラキラした街の真ん中とも言えるような場所に、星を観測できる天文台があるんです。それが東京大学 駒場キャンパス16号館の屋上にある、天体観測ドームです。

そんな街の隙間にある天文台を、東京大学大学院 理学系研究科の直川さんに案内していただきました。
駒場にある天体観測ドームを見てみよう!

渋谷駅から井の頭線に乗って2駅、駒場東大前駅を下りてすぐの場所にあるのが、東京大学の駒場キャンパス。その正門から入って5分ほど歩いたところに、今回の目的地である16号館があります。

16号館の屋上にあるのが、この天体観測ドームです。普段は施錠されていて、立ち入ることができない場所に設置されています。
Google Mapで見てみるとこのあたり。屋上に半球状のドームがあるのがわかりますね。

こんな場所にあるのですから、それはもう、東京のビル群がとても良く見えます。これは日が暮れたあとの写真ですが、街明かりでキラキラ、とってもきれい!!…天体観測には、あまり向かなそうな場所ですね。
天体観測ドームの近くを、360度カメラで撮影してみました。ちょうど夕暮れ時のビル群がとってもきれいです。遠くには富士山も見えています。

この天体観測ドームの中に入り、2階に上がると見えてくるのが、この望遠鏡です。でっかい!かっこいい!

まず目を引くのが、でっかい2つの望遠鏡の鏡筒。もともとは、ちゃんとした観測のために用意された鏡筒だと思われるのですが、現在利用できるのは残念ながら片方だけです。
また、この大きな望遠鏡だけでなく、隣についている望遠鏡や背中に乗せた望遠鏡でも、天体観測を行っています。
もちろん天体観測ドームは、天体を見るために、シャッターを開いたり、開いたシャッターの方向を回転させたりすることができます。これらは有線のコントローラーを使って操作します。ちょっとだけ操作させていただいたのですが、大きな装置が自由に動く感覚は、とっても楽しかったです。

このような天体観測ドームに設置されている望遠鏡には、コンピューターで観測したい天体を自動で追尾してくれるシステムが備わっていることも多いのですが、残念ながら、この望遠鏡には現状そのようなシステムはありません。ですので、やはり有線のコントローラーを使って、望遠鏡を見たい天体の方向に向けます。手動で。
こちらは、月を観測しようとしているようすをタイムラプス撮影した動画です。望遠鏡のコントローラーとシャッターのコントローラーを両手持ちして、とっても器用に望遠鏡を月の方向に向けています。職人技…!
都心の天体観測ドームで見えた星たち
そんな都心にある天体観測ドーム。もちろん、本格的な観測に理想的な環境とはいえませんが、それでもいろいろな天体を観測し、撮影することが可能なんです。しかもスマートフォンで。今回は、手持ちのiPhone SE(第2世代)とPixel 7を使って撮影させていただきました。
月

まずは、一番身近な天体であるお月さま。こんなにばっちり、撮影することができました。
ちょうど半月に近いタイミングだったこともあり、明るい部分と暗い部分の境界では、クレーターの凸凹がとってもはっきり見えています。

明るい部分と暗い部分の境界を、少し倍率を上げて撮影したものです。クレーターの中央にある「中央丘」まで、しっかり写っています。
木星とその衛星

特徴的な縞模様がとてもわかりやすい木星と、そのまわりにみえる衛星のイオです。木星の模様だけでなく、その衛星までもスマホで撮影できるなんて、正直ちょっとびっくりしてしまいました。
プレアデス星団(すばる)

こちらは、和名では「すばる」と呼ばれているプレアデス星団です。名前は聞いたことがあったのですが、実際にこうして見るのは初めてでした。キラキラした星が集まって並んでいて、とってもきれい…!
オリオン大星雲

そして最後に撮影したのが、地球からおよそ1300光年離れたオリオン大星雲です。点々と輝く星だけでなく、このようにもやもやした星雲まで、スマホでも撮影できるなんて、本当にびっくりです。

ちなみに、撮影している時のようすはこんな感じ。動画として撮影して、その中からくっきり写ったコマを切り出して使っているそうです。
長い間使われていなかった天体観測ドーム
いろいろな天体を観測し、撮影することができるこの駒場キャンパスの天体観測ドーム。ですが実は、数年前まで長い間放置され、ほとんど使われていない状態が続いていました。昔は学術的な研究活動も行われていたようなのですが、周囲がキラキラと明るいこのような環境です。次第に使われなくなっていったようです。

そんな天体観測ドームを復活させたのが、今回案内してくださった東京大学大学院 理学系研究科の直川史寛さんです。

直川さんは宇宙物理学、特に宇宙論を専門として、大学院では理論的な研究を中心に行ってこられました。一方で、学部生の頃から寮の屋上などで天体観測もされていたそうです。世界各地の研究所を訪れる際にも、小学生の頃にトイザらスで買った小さな望遠鏡を持参して、スマホでいろいろな天体を撮影しているのだとか。
そんな直川さんが、駒場キャンパスにあるこの天体観測ドームを再発見、放置されていた状態から、再び観測に使える環境へと整えていきました。今では、技術職員の滝澤さんと一緒に、この天体観測ドームを使って、いろいろな天体の撮影に挑戦しているそうです。駒場祭では友人とともに「駒場で昼の星をみよう!」などといった企画を行い、ちょっとした賞を受賞されていました。
スマホを使った観測なので定量的な観測は難しいのですが、2023年に起きた超新星爆発SN2023ixfを観測、その減光を確認したこともあるそうです。学術的にも、ちょっぴり意味があるかもしれない観測結果。すごい。
おわりに

天体観測だけを目的にするのであれば、もっと静かで暗い環境を選んだほうがいいのは間違いありません。それでも、世界的な大都市である東京の渋谷からたった2駅、なんなら歩いていけちゃうような場所に、星を見上げることができる天文台があるというのは、とっても素敵なことだと思います。
そんな不思議で面白い環境にあって、長いあいだ使われていなかった駒場キャンパスの天体観測ドーム。それを、ここまで観測できる場所としてよみがえらせた直川さんのパワーには、すごいとしか言いようがありません。

そんな直川さんも、2026年3月には博士号を取得し、東京大学を卒業予定。直川さんがいなくなったあとも、この天体観測ドームが維持されて使い続けられるよう、いろいろな形で働きかけをされているとのことでした。
この先、この天体観測ドームがどのように使われていくのかはまだわかりません。けれど、東京の街の隙間に、宇宙とつながることができる場所があるということを、少しでも多くの人に知ってもらい、少しでも興味を持っていただけたら、それだけで、ひっぐすたんはとっても嬉しく思います。
直川さんのSNSアカウント (他の天体写真や研究についてなど)
X : https://x.com/Sumafo_obs
Instagram : https://www.instagram.com/sumafo_obs/
素粒子はかわいい。素粒子のイラストやマンガを描いています。博士(理学)





