【今回の記事は高エネルギー加速器研究機構のサポートを受けて描かせていただいております】

深さ約50メートル、直径約10メートルの大きな穴!

そんな穴が、茨城県東海村にあるJ-PARCのすぐ近くで始まった工事で作られています。そこに作られるのはハイパーカミオカンデ計画のための、上下に動くことができちゃうニュートリノ検出器、IWCDです。

みんなだいすきニュートリノ!(だいすきですよね?)

茨城県東海村で作ったニュートリノを遠く離れた岐阜県神岡町で観測する…そんな、とってもスケールの大きな素粒子実験、それがT2K実験です。

すでにいろいろな成果をあげているT2K実験ですが、それをさらにパワーアップさせた次の実験、ハイパーカミオカンデ計画の準備がちゃくちゃくと進められています。

そのハイパーカミオカンデ計画の一部として、東海村に建設が進められているのがIWCD(Intermediate Water Cherenkov Detector、中間距離水チェレンコフ検出器)

J-PARCの近くでニュートリノを観測するための、ちっちゃいスーパーカミオカンデのような構造を持ちながら、なんと上下に約40メートルも動くことができちゃう新しい検出器です。上下に場所を変えながらニュートリノを観測することで、いろいろなエネルギーのニュートリノを詳しく調べることができるんです。

J-PARCから飛んでくるニュートリノのビームは、生まれたあとに少しずつ広がり、IWCDの場所に届くころには、なんと30メートルほどの幅をもつ太いビームになっています。検出器を上下に動かすことで、ビームの異なる位置にあるニュートリノを観測することができ、これによって実験の精度がぐっと上がっちゃうんです。

IWCDについての詳しい説明は、ぜひ第1回の日記を見てみてね。

50メートルの立坑はこうやって作る!

IWCDくんの建設にあたっては、なにはともあれ、上下に動く「ちっちゃいスーパーカミオカンデ」のような検出器を収めるための、深さ50メートル、直径10メートルの立坑、つまり大きな穴を掘る必要があります。

50メートルというと、シンデレラ城と同じくらいの高さ。そんな深さがある穴には、学校のプールおよそ10個分の水が入る計算になります。おっきい!!

前回の日記でも少し説明しましたが、50メートルの深い穴を掘るために、圧入式オープンケーソン工法と呼ばれる方法を使います。

その流れは、大ざっぱに次のような感じです。

  1. 刃口(穴を掘り進めるための大きなリング状の構造物)を設置する
  2. その上に鉄筋を組み立てて、木製の型枠を取り付ける
  3. 型枠の間に生コンクリートを流し込んで、穴の壁になるリングを作る
  4. 刃口の近くをクレーンで吊るした採掘機で掘ると、リングが自分の重さで下に沈もうとするので、それを上に取り付けた圧入装置で水平を保つように制御しながら沈めていく
  5. リングが十分に沈んだら、2から4を全部で11回繰り返す
  6. 50メートルの穴が完成!

一言でまとめると、「先端を尖らせたドーナツ形の壁を地面に設置して、その先端部分を掘ってあげると、壁が自重で沈もうとするので、圧入装置で上から制御しながら沈めてあげる、十分に沈んだら壁を継ぎ足して、また掘る」…これを繰り返すことで、大きくて深い穴とその壁を同時に完成させちゃうのです。

流れで書いてしまうと簡単に見えてしまいそうですが、もちろん、実際の作業はまったく簡単ではありません…!最初に設置する刃口のついたリングは、計算通りの形で作られて、きっちりと水平を保った状態で設置されないといけません。

また、壁になるリングには、1段でおよそ500トンもの生コンクリートが使われます。それが最終的には11段にもなるんですから、かなりの重さになります。そのリングの上に、圧入装置を設置することによって、設計通りにリングが水平を保ったまま沈むよう、とてもとっても丁寧に調整する必要があるんです。

もちろん、この工法で安全に、ばっちり穴を掘ることができるのかを確認するため、事前に約60メートルのボーリング調査を行って、地盤の状態を詳しく調べています。

言葉で説明すると、ちょっぴり複雑で想像しづらいかもしれません。そこで!ひっぐすたんでは、この穴掘りの現場を何度かにわたって取材して、そのようすをこちらでご紹介していきます!

IWCDくんの「刃口」が設置されました!

2025年11月に着工式が行われたIWCDくん。それから土地の造成や建設の準備などが、着々と進められてきました。

このあたりの作業は直接取材していないのですが、いただいた写真をもとに、ちょっとだけ紹介させていただきます。

2025年12月上旬、測量によって立坑の中心に三角コーンが置かれたあと、地面にドーナツ型の円が描かれました。

刃口を安定した場所に設置するため、円に囲まれた部分の土を一度掘り出し、そのあと砂を固く埋め戻します。こうしてあらかじめ地面をしっかり固めておくことで、刃口を安定した状態で設置することができるのです。

2026年2月、立坑のいちばん下に設置する「刃口」と呼ばれるリング上の構造物の設置が行われました!

別の場所で作られた刃口のもとになる鉄板のパーツを、あらかじめ設置しておいた木の板の上に、慎重に乗せていきます。作業はとっても真剣!

こうして、ぐるっと一周の刃口が設置されました!これの上に、穴の壁面となるリングを乗せていくことになります。

2026年2月中頃、刃口の基礎ができていました!

刃口のパーツの設置が終わり、これからの工事の準備がひと通り整ったタイミングで、今回取材をさせていただきました!ありがとうございます!

国道245号沿い、J-PARCの敷地から少し離れた場所に、IWCDくんの建設現場があります。

前回訪れた2025年11月にはなかった、円形のような足場が設置されています。これは立坑の雰囲気…!

まだ地面を整えていた2025年6月と比べると、ずいぶんと工事が進んできたように感じます。

ドキドキしながら、関係者以外立ち入り禁止の建設現場の中に入ると…どどんと現れました、立坑の建設現場です。

この下に約50メートルもの大きな穴ができる予定なのですから、そりゃあドキドキしちゃいます。

さらに近づいてみると…あまりの大きさに写真に収っていませんが、2枚の先端が溶接された鉄板が、ぐるっと直径10メートルのドーナツの形をして設置されていました。

これが、50メートルの深さの穴を掘るための刃口のベースになります。

全体のようすも撮影してみたくて、魚眼っぽいレンズでも写真を撮ってみました。魚眼が効きすぎて少し歪んではいますが、刃口がぐるっと円形になっているようすがわかる…かもしれません。

ちなみに、刃口の下に並んでいる木の板は、刃口を支えると同時に、正しい位置に設置するためのガイドにもなっています。

刃口の基礎になる2枚の鉄板の間には、鉄筋となる鉄の棒がたくさん生えていました。トゲトゲしていて、ちょっと痛そう。

最終的には、この部分に生コンクリートを流し込むことで、穴の壁面となるとっても丈夫な鉄筋コンクリートが作られます。

刃口の鉄板を上から覗き込んでみると、先がすぼんでいるようすが見えます。ここがまさに、下に下に土を掘り進めるための「刃」になる部分です。

そんな刃口の先端を、外からも見てみましょう!この写真は、リングの内側から見た刃口のようすです。

ここから、その先端に近づいていくと…

鋭い!という感じではありませんが、尖った刃のような形状になっています。この部分で土をずりずり押しのけながら、下へと掘り進んでいくことになります。ここから50メートル、がんばってね…!

リングの中央から、360度カメラで撮影してみました。刃口がぐるっと一周しているようすが、よくわかると思います。

ひっぐすたんのぬいが乗っている三角コーンの下に、このあと深さ50メートルの穴ができる…なんだかとっても不思議な気分になりますね。

ドローンで空から見てみよう!

今回の取材では、工事の主体となっている株式会社森組の水野さんと初田さんに、たくさん説明をしていただきました。その流れで、ドローンによる空撮もしていただいちゃいました!本当にありがとうございます!

こちらが、ドローンで空撮したIWCDくんの建設現場のようす!仮囲いに囲まれた工事現場の右端の方に、これから約50メートルの立坑になる予定の、不思議な円形の構造物が見えています。

ドローンを刃口の上に飛ばして、真上からも撮影していただきました。とてもきれいな円の形をしているのが、よくわかります。

これからの作業

刃口が設置されたこのあと、鉄筋を組み上げて、刃口の上にぐるっと木製の型枠を設置して、その中に生コンクリートを流し込んで、約4メートルの1段目の壁面のリングを完成させる予定になっています。

その後、リングの内側を採掘機で掘り進めることで、リングが圧入装置のサポートを受けながら少しずつ地面の下に沈んでいきます。1段目のリングが完成するのに、だいたい1ヶ月くらいかかるそうです。

ここからこのリングを少しずつ地面に沈めていって、ゆっくりゆっくり丁寧に、最終的に「ちっちゃなスーパーカミオカンデ」のための50メートルの穴が作られていきます。並行して進んでいるハイパーカミオカンデ計画と合わせて、工事の進展がますます楽しみになりますね!

次回は立坑を少し掘り進めた頃に、またレポートをできるといいなと思っています。

さいごに

今回のレポートを描くにあたり、KEK(高エネルギー加速器研究機構)の菊池さん、J-PARCの宇津巻さん、前田さん、株式会社森組の水野さん、初田さんには大変お世話になりました。本当にありがとうございました!

KEK/J-PARCニュートリノグループのサイトはこちら
https://www-neutrino.kek.jp/

ちょっとしたお散歩動画も作ってみました。