【今回の記事は東京大学宇宙線研究所附属 神岡宇宙素粒子研究施設のサポートを受けて描かせていただいております】

みんな大好きスーパーカミオカンデちゃん、その後継となるハイパーカミオカンデちゃん建設の進捗情報の第8回、いよいよ水をいれるための水槽を造り始めました!

第1回から第7回までの成長日記はこちら

前回までのあらすじと現在の状況

2021年5月、アクセス坑道の掘削からスタートしたハイパーカミオカンデの建設。タンクが設置される場所までの坑道(アクセス坑道、アプローチ坑道)が完成したあと、本体空洞やそのまわりの工事が進められてきました。

そしてついに、2025年7月にハイパーカミオカンデのいちばん大事な部分、巨大な水槽が設置される本体空洞の掘削工事が完了しました!(本体空洞の完成したようすについては、前回の日記を見てね!)

このあとはハイパーカミオカンデを素粒子実験の装置とするために、水槽を造って、光電子増倍管を設置して、超純水を入れて実験をする…!という流れになりますが、今回は2025年8月から始まった水を入れるための水槽を設置する作業をレポートします!

水槽の設置方法(おおざっぱ)

とっても硬い岩盤を掘削してできた、直径69メートル、高さ73メートルもの巨大な円筒形の空間。そこに、どうやって水槽を造っていくのでしょうか…?その大工事の流れを、とってもおおざっぱにまとめると次のようになります。

  1. まず土台:空洞の底に、鉄筋コンクリートを敷く
  2. 骨組み作り:空洞の壁に沿って、鉄骨と鉄筋を組みあげる
  3. ステンレス板の取り付け:鉄骨に貼り付ける形で、水槽の壁面となるステンレス板を取り付ける
  4. コンクリートで固定:岩盤とステンレス板の間にコンクリートを流し込み、固定する
  5. 下から上へ繰り返す:2から4を下から上に順番に繰り返して、水槽の側面を作っていく
  6. 最後にふた:下で組み立てた上部のフタを吊り上げて、一番上に設置する
  7. 底も仕上げ:最後に、底面にステンレス板をとりつける

こうして完成するのが、直径68メートル、高さ72メートルというとっても巨大な水槽です。この中に26万トンもの超純水を入れて、ニュートリノを待ち構えることになります。

水槽の設置工事を見てみよう

今回お伺いしたのは、2025年12月末。その時点で、空洞の底に鉄筋コンクリートを敷き終えて、側面のステンレス板を下から4段分取り付けるところまで工事は進んでいました。

本体空洞の底の部分から中に入ると、以前とは少し違った風景が広がっていました。特に変わったのが、壁面をぐるりと取り囲むように設置された足場です。

360度カメラでも撮影してみました。空洞の内側をぐるりと囲んでいる足場のようすが、よくわかると思います。

改めて壁面をよく見てみると、足場よりも下の部分は、白くてつるりとした質感になっています。これが、水槽の壁面となるステンレス板がすでに取り付けられた部分です。

ステンレス板に近づいて撮影したのがこの写真。だいぶ「水槽」っぽい雰囲気が出てきましたね。

ちなみに、一番下の1段目のステンレス板は高さ2メートルで、2段目以降は2.4メートル、最後の段は0.4メートル。これを全部で31段つなげて、巨大な水槽が完成します。でっかい!

ステンレス板どうしのつなぎ目を見てみると、溶接で接合されています。しかもなんと、すべてのつなぎ目が三重以上に溶接されているそう。これはとっても丈夫そう…!

壁面に取り付けられた足場の上で。

実際に壁面にステンレス板を取り付けているようすを見るため、壁面の足場に登らせていただきました。そのままでは危険なので、安全帯をつけ、足場の手すりなどに体を固定しながら移動します。

これが、一番上の足場まで登ったときに見える壁面のようすです。コンクリートを吹き付けた岩盤の前に、壁面に固定された鉄骨と、その間に飛び出している鉄筋が見えています。

鉄筋の間から下を覗き込んでみると、どろどろしたものが見えました。これが、固まる前の生コンクリートです。鉄骨にステンレス板を固定し、ステンレス板と岩盤の間にコンクリートを流し込むことで(いわゆる鉄筋コンクリート)、とても頑丈な水槽の壁面を作ることができるんです。

ちょっとだけ、生コンクリートを流し込んでいるようすも見ることができました。壁面とステンレス板の間に、どろどろどろどろと生コンクリートが流れ込んでいくようすが見えています。

生コンクリートは、使用する際にいろいろなルールがあり、現場で荷卸ししたときに受入検査を行って、その品質をチェックしないといけません。こうしたチェックの積み重ねが、頑丈な水槽を造るために欠かせない工程になっています。

ちなみにこのコンクリート、神岡町にある地元の工場で作られたものを、90分以内にミキサー車で現場まで運んできて使用しています。冬になると雪深くなる神岡町で、このルールを守るのはかなり大変そう…!

品質チェックされた生コンクリートは、クレーンで上まで運ばれて、壁面に沿ってぐるりと流し込まれていきます。ちなみに、高さ2.4メートルの1段分を作るのに、生コンクリートが360立方メートルくらい必要になります。たくさん!!

もちろん、ステンレス板を適当な位置に取り付けていては、26万トンもの巨大な水槽を造ることはできません。中心からの距離を正確に測り、正しい位置にステンレス板がくるように設置する必要があります。そのため、空洞の中央に測量器が設置されています。

この測量器を使うことで、ステンレス板と空洞の中心との距離を正確に測定できます。実際に水槽に水を入れると、水の重みでステンレス板は外側に押し出される力を受けるため、その分も考えて設計されているそうです。

最後に、壁面の足場の上から360度カメラで撮影した画像です。ステンレス板を設置している今だけ見ることができる光景。ぜひ、ぐりぐり動かしながら、いろいろな場所を眺めてみてください。

純水を作る装置を見てみよう

今回は、ハイパーカミオカンデの水槽建設工事だけでなく、その水槽に入れる不純物をできる限り取り除いた水、いわゆる超純水を作るための装置の建設状況も拝見させていただきました!

こちらが、2025年12月時点での、超純水を作る装置が設置されている純水室のようすです。写真右側の構造物の上には、何本ものパイプが並んでいて、それらが中央の建物へとつながっています。

純水室も360度カメラで撮影してみました。画面をぐりぐり動かしながら、探索気分でいろいろな部分を覗いてみてください。

こちらは、以前に撮影した純水室の写真です。こうして並べて比べてみると、着々と工事が進んで立派になっていく姿に、なんだか感慨深くなってしまいます…!!

部屋の奥にある鉄骨の建物の中では、超純水を作るための装置が準備されていました。スーパーカミオカンデにも同様の装置はありますが、ハイパーカミオカンデで必要な超純水の量は、なんとスーパーカミオカンデの5倍以上。その膨大な量に対応するために、装置のサイズもぐんっと大きくなっています。

純水室で一番背の高い真空脱気塔。

部屋のはしっこには、3階建ての建物ほどの高さがある真空脱気塔も設置されています。これは、純水中に溶けて残る気体を取り除く装置。とってもおおきい!

こちらは、建物の上から水槽の設置される方向を見下ろした写真です。黒い配管は「装置と水槽を繋ぐ純水ライン」、グレーの配管は「冷却水や排水のライン」になっています。まさに、ハイパーカミオカンデの心臓のような場所ですね。

純水室の隣の部屋には、超純水の「もと」になる水が貯められています。この写真は、隣の山から引いてきた水を、左上の配管から右下のコンクリートの貯水槽にためているところです。豊かな自然に囲まれた、神岡ならではですね。

貯水槽の中を、ちょっとだけ覗き込んでみました。少しホコリはかぶっていますが、透き通ったきれいな水がたっぷりとたまっています。この水を徹底的にきれいにして、最終的にハイパーカミオカンデの水槽に入る超純水になるわけです。

いろいろな写真

造っている水槽は直径68メートルの円筒形なので、側面となるステンレス板もゆるやかなカーブを描いている必要があります。ですが、現場に搬入されるときには、まっすぐな状態になっています。

このまっすぐなステンレス板を、ゆるいカーブを描いた型の上に乗せて、曲げながら固定していきます。さらに、端の部分にはカーブを描いた棒を取り付けることで、水槽の壁面にぴったりあう形に仕上げているのです。

ステンレス板は、すべて溶接によって三重以上に接合されています。この溶接作業ですが、今回の工事のために用意された試験に合格した人だけが行えることになっています。それだけ、この工程が重要な作業ということなのです。

実は今回、初めて冬のハイパーカミオカンデにお邪魔させていただきました。そして、見事な大雪に見舞われました。

見慣れている坑道の入口も、雪で埋もれて少し新鮮…なのですが、それ以上に大変だったのが、坑道の入口までの道路です。実際に、関係者の方の車が山道の途中でスタックしてしまい、しばらく入口までたどり着けなくなってしまう場面もありました。雪道、怖い。

そんな怖い雪ですが、神岡の道の駅「スカイドーム神岡」では、たくさんのアヒルさんになっていました。かわいいね。

これからの作業

水槽の側面を作る作業は、現在は少しゆっくりとしたペースで進められていますが、最終的には1週間に1段のスピードで進行する予定。側面の完成は、だいたい2026年8月ごろ。

その後、いよいよ、ニュートリノが放つ光を捉えるための光電子増倍管の取り付け作業が始まります。

ハイパーカミオカンデの完成も、いよいよ近づいてきちゃったかもしれません…!!

最後に

今回もレポートを描くにあたって、東京大学宇宙線研究所の竹田さん、井下さん、武長さん、株式会社熊谷組の五反田さんには大変お世話になりました。本当にありがとうございます!

ちょっとしたお散歩動画です。

東京大学宇宙線研究所附属神岡宇宙素粒子研究施設のサイトはこちらから。
https://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/