今回の記事は東京大学宇宙線研究所附属 神岡宇宙素粒子研究施設のサポートを受けて描かせていただいております】
みんな大好きスーパーカミオカンデちゃん、その後継となるハイパーカミオカンデちゃん建設の進捗情報の第7回、水をいれるタンク部分の空洞がついに完成しました!

前回までのあらすじと現在の状況

2021年5月、アクセス坑道の掘削からスタートしたハイパーカミオカンデの建設。タンクが設置される場所までの坑道(アクセス坑道、アプローチ坑道)が完成したあと、本体空洞やそのまわりの工事が進められてきました。

ハイパーカミオカンデのいちばん大事な部分、巨大なタンクが設置される本体空洞の掘削工事は2022年に始まりました。2023年10月には上部のドーム部分の掘削が完了。その後、タンク部分の掘削がスタートしました。(タンク部分の掘削については、前回の日記を見てね!)
そして、2025年7月、本体空洞下部のタンク部分の掘削が完了!
これで、ハイパーカミオカンデの建設工事の山場のひとつだった「穴掘り作業」が、おおよそ完了しました。
完成したタンク部分の空洞を見てみよう
今回は、6月28日に行われた報道関係者向けの「ハイパーカミオカンデ空洞掘削完了記念見学会」に、いろいろなメディアの方々と一緒に取材でお邪魔させていただきました。ありがとうございます!

見学会の冒頭では、実験共同代表者である東京大学の塩澤さんが、ハイパーカミオカンデについての概要を簡単に説明をしてくれました。ニュートリノ!
空洞を下から見上げてみる

まずは完成したタンク空洞を下から見学です。

タンクの底部に接続されている4号アプローチ坑道から、完成した本体空洞に入ります。

目の前に広がるのは、人影と比べても圧倒的な広い空間。ここが山の地下600mだとはとても思えません。

見上げてみると、空間が円筒形をしていることがわかります。あまりのスケール感に現実感が薄れてしまいます。

以前、本体空洞の中に入ったときに使った階段も壁面に残っていました。この階段を使って73mの高さを昇り降りするとなると、筋肉痛まちがいなしです。
360度カメラでも撮影してみました。グリグリ回せば、この不思議空間の形状が伝わるかもしれません。

中央には、鹿島建設さんが設置してくれた緑色の巨大な三角コーン。ニンゲンと同じくらいのサイズがあります、でっかい。

鹿島建設さんのご厚意に甘えて、ひっぐすたんを三角コーンのてっぺんに乗っけてもらいました。ひっぐすたん、ハイパーカミオカンデとっても大きいね、ひっぐすたん。
空洞を上から見下ろしてみる

次は外周坑道と本体空洞の接続部分から、本体空洞を上から覗き込みます。

人がいっぱいいる向こう側に、本体空洞があります。わくわく。

これが上から覗き込んだ、本体空洞です。空洞の底面からここまでの高さが73m、だいたい20階建てくらいのビルがすっぽり収まるような大きさです。壁際のショベルカーが豆粒に見えます。中央には、下で見た緑色の巨大な三角コーンがちょこん。

前方を見ると、これから壁面工事に使うレールや足場がぐるっと一周。ここを歩くのは…絶対に怖い。

写真のように、少しだけ本体空洞に張り出したような足場が設置されていて、そこから空洞を覗き込ませていただきました。横から見てみると、なかなかスリルのある構造になっています。
ここも360度カメラで撮影してみました。ただし、安全のためカメラは柵の外には出せなかったので、少し中途半端な位置からの撮影ですが、それでも雰囲気は伝わると思います。
いろいろな写真と動画

空洞を上部から見学した場所の後ろには、純水製造装置が置かれる予定の部屋があり、そこに式台と椅子が並べられていました。この見学会の後、ちょっとした記念式典が行われたそうです。山の地下深くで行われる記念式典…すごく素粒子実験感があって大好きです。ラブ。

またこの日の夕方、神岡町公民館では東京大学の田中さんによる本体空洞掘削についての講演会も開催されました。司会はなんと、ひっぐすたんの中の人です。地元の方も遠方の方も本当にたくさん来てくださって、とっても嬉しかったです、ありがとうございます!
この講演会でも少し触れてたのですが、ハイパーカミオカンデの本体空洞の掘削をしている途中、岩盤の観測データに少し気になる変化が見つかりました。「万が一」があってはいけないので、掘削工事をいったん中断して、壁面の補強工事を実施。その結果、本体空洞の完成は予定より半年ほど遅れることにはなりましたが、なによりも大切なのは、安全に、そして無事に完成させることなのです。

神岡町にはなんと、流葉温泉「ニュートリノ」という温泉があるんです。さすがニュートリノの町。ニュートリノって書かれたタオルも販売していましたので、お土産にいいかもしれません。

神岡町にあるあすなろさんで、アイスコーヒーとケーキでひと休み。至福の時間です。
2025年7月 本体空洞完成
今までの写真を見て、「ん…?」っと気づいた方もいるかもしれません。

そう、この見学会が行われた6月末時点では、タンクの底面に段差が残っていました。はじめに少し書いたように、本体空洞が完成したのは2025年7月なのです。

これが本当に、本体空洞が完成した後の写真!2021年5月のアクセス坑道掘削開始から4年と少し。ついにハイパーカミオカンデの穴掘りが完了しました。これだけの規模の穴掘りを4年…驚くほど早い気がします。
これからの作業

本体空洞が完成して、いよいよ水をいれるためのタンクの設置工事が始まります。まずは、岩盤とステンレスの板の間に鉄筋を組んでコンクリートを流し込み、大きな水圧にも耐える水槽を作っていきます。その上にフレームに取り付けた光電子増倍管を吊り下げながら設置、最後に純水装置で作った純水をいれて、ハイパーカミオカンデの純水タンクの完成となります。
ステンレスの板で水槽を作る作業は2025年8月から始まり、2026年にはフレームと光電子増倍管の取り付けも順次始まる予定です。完成形が見えてきたハイパーカミオカンデ、引き続き楽しみに見ていてください!
最後に
今回もレポートを描くにあたって、見学会を開催してくださった東京大学のみなさま、講演会や見学会をサポートしてくださった飛騨市や神岡町、鹿島建設株式会社のみなさまには大変お世話になりました。本当にありがとうございます!



東京大学宇宙線研究所附属神岡宇宙素粒子研究施設のサイトはこちらから。
https://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/

素粒子はかわいい。素粒子のイラストやマンガを描いています。博士(理学)