今回の記事は東京大学宇宙線研究所附属 神岡宇宙素粒子研究施設のサポートを受けて描かせていただいております】

みんな大好きスーパーカミオカンデちゃん、その後継となるハイパーカミオカンデちゃん建設の進捗情報の第6回、水をいれるタンク部分の空洞を半分くらい掘り進めました!

第1回から第5回までの成長日記はこちら

前回までのあらすじと現在の状況

鹿島建設さんが作成したハイパーカミオカンデの3D模型に説明を乗せたもの

2021年5月から坑道の掘削を開始したハイパーカミオカンデの建設ですが、タンクが設置される部分までの坑道(アクセス坑道、アプローチ坑道)が完成したあと、いよいよ本体空洞やそのまわりの工事が始まりました。

2024年7月現在の本体空洞の掘削状況。

本体空洞の上部にあたるドーム部分の掘削が2023年10月に完了、現在はドーム空洞から下方向へ、タンク部分の掘削を進行しています。将来は巨大な水のタンクが設置される、とても重要な部分!

純水を入れるタンク部分を掘削中

本体空洞を上から覗いてみる

ということで、現在掘り進めている本体空洞のタンク部分を見てみましょう!

上からタンク部分の空洞を覗き込んだ様子。

これが2024年7月現在のハイパーカミオカンデの本体空洞です!空洞の規模があまりに大きくて、スケールがわからなくなってしまいます。タンクの底で作業をしているショベルカーが小さく見えてしまうほど。直径が69m、深さは外周坑道から下に約40mの、巨大な円筒形の空間です。

底の中央には穴が空いています。

タンクの底をよく見てみると、中央に穴が空いています。この穴はタンクの一番下に接続している4号アプローチ坑道につながっています。下方向に掘削するため、地面を火薬で破壊して出てきた岩石をこの穴に落として、4号アプローチ坑道を通じて坑道の外に排出しているのです。

よく見ると段差ができています。

タンクの底の部分には場所によって約4mくらいの段差がありますが、これは1回の発破で下に掘れる深さに相当しています。この高くなっている部分の地中に火薬を設置して発破し、崩れた岩石をショベルカーで穴に落として排出しているのです。

イラストで簡単に説明するとこんな感じ。これを繰り返して本体空洞を段々と深くしていきます。

天井には壁に沿ってレールが引かれています。

下だけでなく上にも目を向けてみると、壁面に沿ってぐるっと鉄のレールのようなものが設置されています。これは将来的にハイパーカミオカンデの水タンクを設置するときに使うものだそうです。徐々に完成形も見えてきて全体像が見えてくると、そのスケールの大きさにはやはり圧倒されてしまいます…!

掘っている現場まで降りるための仮設エレベーターと階段。

左を見てみると、外周坑道からタンク部分を掘っている現場までアクセスするための仮設の階段があります。仮設のエレベーターも併設されていますが、それも途中まで。下の現場にアクセスするためには、この階段を使わないといけないのです。体力勝負!

タンク部分の本体空洞を上から見下ろせる場所。

ここまでの写真は、外周坑道と本体空洞がつながっている場所から撮影されたものです。坑道の周囲に鉄骨のレールが設置されているのが見えると思いますが、ここのレールにはクレーンが取り付けられていて、タンクの底と大きな荷物のやり取りを行っています。

イラストで見ると、赤い矢印の位置。

360度カメラでも撮影してみました。外周坑道から本体空洞につながってとても深い穴になっているのがよくわかるかと思います。

本体空洞のドーム部分が完成してタンク部分を掘り始めた直後に、同じような位置(正確には2つ左隣の本体空洞につながっている坑道)で撮影した写真もあったので、ぜひ比較してみてください。

本体空洞の掘削現場に降りてみる

先ほど見えていた階段を使って、下の現場まで行ってみます。

下の現場に降りるための階段。

坑道から本体空洞に飛び出る形で仮設階段が設置されているので、ちょっと怖い。

階段を降りているところ。

数段の階段をぐるぐるぐるぐると回りながら約40m降りていきます。目が回る。

本体空洞を掘り進めている現場の様子。

そしてようやく、タンク部分の本体空洞を下に掘り進めている現場に到着!足元はこれから掘り進めていく部分であり、重機がその上を走りまわってはいるものの、岩石がむき出しになって舗装されておらず、気をつけて歩かないといけません。

下から上を見上げてみた。

上を見上げるとこんな感じです。砕いた岩石が舞い散っているため、天井のドーム部分が霞んでいます。

空気を循環させるためのパイプ。

そんな場所ですから、もちろん空気を循環させないといけません。このようなダクトで空気を本体空洞に送り込み、反対側にあるダクトで空洞の外に吸い出しています。

ここも360度カメラで撮影してみました。直径約69m、天井の一番高いところまでの高さ約60mの大きな円筒形の空間、圧巻です。

360度カメラの動画にもしてみました。この動画だけ音声をそのまま入れているので音量注意です。

岩石に火薬を詰めるための穴を開けているところ。

空洞の上から覗いてみたときに少し高台になっていた場所へ行ってみると、かっこいい装置で地面に穴を開けています。火薬を詰めるための穴です。

この穴の中に火薬を詰め、砂で蓋をして(左の写真)、さらにその上から覆いを被せて(右の写真)、24時間で2回発破を行っています。

こうやって発破をして砕いた岩石を、この動画のように中心に開いている穴に落としているのです。

壁面に穴を開けているところ。

この写真は、本体空洞の壁面にアンカーを打ち込むための穴を開けているところです。掘削した場所の壁面にはアンカーと呼ばれるケーブルを打ち込むことによって、壁面の強度を上げているのです。

ということで、本体空洞の底での取材も終わり。上まで登らないといけません。その時の様子も動画に撮ってみました。とてもとても疲れました。

岩石を排出する4号アプローチ坑道

最後に4号アプローチ坑道の先端部に行ってみました!

4号アプローチ坑道の先端。

この写真に写っているのが、4号アプローチ坑道の先端部です。つまり、本体空洞を掘ったときに出てきた岩石を捨てていた穴につながっている部分になります。たくさんの岩石で先が詰まっているように見えますが、これはすべて上の掘削現場から降ってきたもの、つまり本体空洞の掘削によって生じた岩石です。

岩石をトラックに乗せるためのパワーショベル。

この岩石を坑道の外に排出しなければいけないのですが、それをトラックに積み込んでいるのがこのパワーショベルです。このパワーショベルで岩石を掻き出してトラックに乗せ、6台のトラックを使って坑道の最深部から外の仮置き場までピストン輸送を行っています。

いろいろな写真と動画

ハイパーカミオカンデの坑道の中(研究と関係あり)

掘削現場の足元にごろごろ転がっている石。

本体空洞を掘削しているときに出てきた岩石の写真。左は伊西岩、右は飛騨片麻岩と呼ぶそうです。

発破して砕けた岩石をさらに細かく砕くために重機に取り付けて使う、金属のロッドです。左が使用前、右が使用後。過酷。

岩石を外に運搬するためのトラック(回送中)の後ろについて行く私たちのグループ。トラックでかい。

ハイパーカミオカンデの坑道の中(研究と関係なし)

今日の予定、10時からひっぐすたん取材。かわいいひっぐすたんのイラストまで描いてくれていました!とってもうれしい!

とっても目立つ一時停止サイン。

坑道に設置されているゲーミング一時停止サイン。

おつかれヒッグスたん(と中の人)。

タンク空洞のそこを見学したあとの休憩中の写真です。階段を登るのが本当にしんどかった…水分がとっても染み入ります。前の日記でも紹介させていただきましたが、このように坑道内でもちゃんと休憩を取れるような部屋が作られています。

ハイパーカミオカンデの坑道の外

中の人の貴重じゃないサイン。

神岡では毎年7月頃、スーパーカミオカンデのタンクの上まで行くことができるとても楽しいイベント、ジオスペースアドベンチャーが開催されています。今回、ハイパーカミオカンデを取材させていただいたのがその直前だったため、スタッフのみなさまに少しだけご挨拶させていただきました!

おいしいコーヒーとピザトースト。

神岡にある喫茶店、あすなろさんで頂いたコーヒーとピザトースト。とてもとてもおいしい。

これからの作業

現在進行している本体空洞のタンク部分の掘削ですが、2024年末には完了して、上部のドーム部分と下部のタンク部分を合わせて、直径69m、高さ94mという巨大な円筒形の本体空洞が完成する予定になっています。この本体空洞の完成を持って大きな掘削工事は終了し、タンク部分にいれる水槽の設置などが始まります。大詰め!

また工事の進行に合わせて、素粒子実験っぽい準備も徐々に始まっています。

とても暗い坑道に設置されたラドン検出器。

例えばこの写真。ハイパーカミオカンデの本体空洞から少し離れた場所に、ラドンを検出するための装置が設置されています。ラドンは岩盤から放出されやすいガス状の原子で、ラドン温泉などで利用されることもありますが、とても微弱な放射線を出しています。この放射線が精密な測定をしたい素粒子実験にはとても邪魔になるため、ラドンの量を測定しておくことはとても重要なのです。

またハイパーカミオカンデの水タンクに設置する光電子増倍管(フォトマル)の準備も始まっています。こちらもレポートしたい!

最後に

今回もレポートを描くにあたって、東京大学宇宙線研究所の安部さん、井下さん、武長さん、取材をサポートしてくださった鹿島建設株式会社の小林さん、橋本さんには大変お世話になりました。本当にありがとうございます!

鹿島建設株式会社の小林さん+ひっぐすたん、橋本さん。
(マスクでお顔が見えないけれど)東京大学の安部さん+ひっぐすたん。

東京大学宇宙線研究所附属神岡宇宙素粒子研究施設のサイトはこちらから。
https://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/