T2K実験、電子型ニュートリノ出現現象の存在を明らかに!(高エネルギー加速器研究機構)
ひさしぶりに素粒子物理学の明るめなニュースがお茶の間に流れたような気がしました!今回の発表の詳細はとりあえずプレスリリースにお任せするとして、ここではT2K実験、およびその前身となるK2K実験について、さくさくっと簡単におさらいしてみましょうっ!
■ニュートリノの種類が勝手に変わる?ニュートリノ振動
粒子を加速するための加速器と宇宙線を検出するための検出器、これらの実験装置は日本にもたくさん設置・運用されているわけなのですが、これだけあると「せっかく日本には両方あるんだからさ、コラボレーションとかしたら楽しいんじゃない?」なんて思っちゃいますよね。しちゃいました。それがK2K実験、そしてT2K実験です。
K2K実験、T2K実験で実験の対象としている粒子はニュートリノ。そんなニュートリノには電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノの3種類があります(標準模型の図とか見てみてね)。もともとニュートリノの質量は0だと考えられてきたのですが、もし仮に、ニュートリノに質量があるとすると、ニュートリノがそこらへんを飛んでいる間にその種類が変わってしまうという現象、ニュートリノ振動が起こります。まるでシーソーが右に倒れたり左に倒れたりするように、電子ニュートリノがミューニュートリノになったり、また元に戻ったりするのです。
この変化はニュートリノが飛んできた距離ととても深い関係があるため、「どこで発生したどの種類のニュートリノをどれだけ離れた場所でどの種類のニュートリノとして検出したか」ということがとても大事なことになってきます。そうすると、【ニュートリノを発生させることのできる加速器】と【ニュートリノを観測することができる検出器】を組み合わせて実験をしたらおもしろい結果が出てきそうだよね!!っということで、ニュートリノを発生させることのできる茨城県東海村にあるニュートリノを作ることができる加速器J-PARCとニュートリノを検出することのできる岐阜県飛騨市神岡町のスーパーカミオカンデ、この2つを使って実験が行われています。
■K2K実験、そしてT2K実験
この計画が出てきたのはJ-PARCができる前でしたので、KEK(高エネルギー加速器研究機構)のつくばキャンパスにあった陽子加速器で作り出したニュートリノを、250㎞離れた岐阜県飛騨市のスーパーカミオカンデに打ち込む実験を行なっていました。この実験を、KEKからKamioka(神岡)、K to Kということで、K2K実験と呼んでいます。スーパーカミオカンデでは太陽から飛んできているニュートリノ振動の観測実験は行われていましたが、人工的に作られたニュートリノでニュートリノ振動が本当に起こっているのかどうか確認するために行ったこの実験によって、2004年6月に「99.99%の確率でニュートリノ振動は存在する! ニュートリノは質量を持っている!」と結論づけました。
そしてJ-PARCのニュートリノ実験施設の完成を2009年に迎えて、K2K実験はT2K実験へとパワーアップします。ニュートリノの発生源を神岡から295㎞離れた茨城県東海村のJ-PARCによるものに変更したのです。おわかりかもしれませんが、T2K実験の頭文字のTはJ-PARCのある東海村のTですね。このT2K実験によって、ニュートリノの性質などをさらに詳しく調べることが可能となったのです。
そして今日の発表では、このミューニュートリノから電子ニュートリノに変化してしまうニュートリノ振動が、ほぼ間違いなく起こっているよ!というものだったみたいです。
【今回の記事は「宇宙までまるわかり!素粒子の世界」の一部を抜粋して、ブログ用に再構成したものになります。こんな感じで素粒子のお話をしてますので、よろしければ見てみてくださいませ】
素粒子はかわいい。素粒子のイラストやマンガを描いています。博士(理学)