この宇宙は生まれた直後に起こったインフレーションと呼ばれる現象によって、原子核のサイズから太陽系のサイズに一瞬で膨張したと考えられています。ですが光を使って見ることができるのは宇宙が生まれて38万年後に起きた光が自由に動けるようになる宇宙の晴れ上がり以降で、それ以前のインフレーションを含む生まれたての宇宙の様子を直接見ることはできません。しかし、インフレーションが起きた時の様子を光を使って見る方法が実はあるのです。それがインフレーションが晴れ上がり期の光に影響を及ぼして残した、特別な痕跡のぐるぐる「Bモード偏光」なのです。
このお話では量子力学の不確定性原理というものが面白い役割を果たします。これは簡単に説明すれば「ミクロの世界ではいろいろなものがピッタリと定まらない」といった感じでしょうか。ミクロの世界でピッタリと定まらないでわずかに揺らいでいたものが、インフレーションによって思いっきり引き伸ばされて目に見えた偏りになってしまうのです。この揺らぎによって宇宙の物質の分布に偏りが生まれて星や銀河、宇宙の大規模構造に発展するのではないかと考えられています。
時間と空間の揺らぎは原始重力波として宇宙に存在し、それが宇宙の晴れ上がり期の光に特別な痕跡を残すと考えられていて、これを観測することでインフレーションの検証を行うことができるのです。この宇宙の晴れ上がりの状態を詳細に観測することを目的として、いろいろな観測実験がいろいろな場所で計画・実施されています。地表からはGroundBIRD、Simons Array、Simons Observatoryといった望遠鏡で、そして宇宙からはLiteBIRD(ライトバード)という観測衛星で見つけようとしているのです。
この宇宙が生まれた直後のインフレーションの様子を知るための衛星LiteBIRDですが、はやぶさやあかつきのような科学衛星を開発・運用している宇宙科学研究所(ISAS)でプロジェクトとして本格的にスタートさせることが決定したみたいです。その上の組織になる宇宙航空研究開発機構(JAXA)などでも改めて議論が行われると思うのですが、これからの活躍に目が離せませんね!
LiteBIRDのwebサイト
http://litebird.jp/
このような感じで宇宙を様々な方法で見ようとがんばっている観測装置たちのお話もたくさん載っている「宇宙の歴史と宇宙観測」、ぜひぜひ見てやってくださいませ。
素粒子はかわいい。素粒子のイラストやマンガを描いています。博士(理学)