ニュートリノ振動と大気ニュートリノ

速報ですね、ノーベル物理学賞、東京大学宇宙線研究所の梶田隆章先生とカナダArthur B. McDonald先生が受賞されました。本当におめでとうございます!個人的なあれなんですが、梶田先生には私の博士論文の主査をしていただいていて、本当にお世話になりました。

取り急ぎの、ニュートリノ振動とスーパーカミオカンデによる大気ニュートリノ検出に関する記事を書いてみました。ノーベル物理学賞おめでとう!な記事はまた後日。

 

ニュートリノ振動ってなんだ?

ニュートリノには電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノの3種類があるのですが、これがそれぞれ別の種類のニュートリノの変わってしまう現象のことをニュートリノ振動と呼んでいます。電子ニュートリノがミューニュートリノに変わったり、ミューニュートリノがタウニュートリノに変わったり。

ニュートリノ振動

ここで別のニュートリノに変わる確率というのは、ニュートリノが持っているエネルギーと進んだ距離に関係しています。例えば、このエネルギーのニュートリノがこの距離を走った時は電子ニュートリノとミューニュートリノが入れ替わりやすい、とかそういう感じです。

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そしてここで大切なことは「ニュートリノ振動はニュートリノに質量がないとおきない」ということ。素粒子物理学の基本となっている標準模型ではニュートリノには質量がないとされています。もしニュートリノ振動があるとすれば、それはニュートリノが質量を持つことの証拠となり、標準模型を超える物理となるのです。

 

大気ニュートリノってなんだ?

そんな標準模型を超えるきっかけになるかもしれないニュートリノですが、その中でも特に地球を覆っている大気の中で発生するニュートリノのことを大気ニュートリノと呼んでいたりします。宇宙のどこかから飛んで来るとてもエネルギーの高い粒子(宇宙線)が大気中の酸素とか窒素とかの原子核に衝突して、パイ中間子と呼ばれる粒子などを作り、それが地表に向かって飛んで行くうちに崩壊して(崩壊ってなんだ?っていう方はこちら)ニュートリノのひとつのミューニュートリノとミューオンと呼ばれる素粒子になり、そのミューオンが崩壊して電子とミューニュートリノと電子ニュートリノになります。ここで発生する電子ニュートリノとミューニュートリノのことを、大気ニュートリノって呼ぶのです。

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ミューニュートリノが少ない?

そんな大気ニュートリノ、東京大学宇宙線研究所が岐阜県飛騨市の神岡鉱山に設置していたカミオカンデ(スーパーカミオカンデの前身)で観測してみたところ、電子ニュートリノは大体予想通りの数が検出できたのですが、ミューニュートリノの数が予想よりも少なかったんです。なんでだろうなんでだろうと考えた結果、これは地球の裏側の大気中で発生したミューニュートリノが地球を突き抜けてくるうちにニュートリノ振動によってタウニュートリノに変わったのではないか?と考えたのですが、それを証明するには至りませんでした。

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そしてスーパーカミオカンデへ

満を持してのスーパーカミオカンデの登場です。

スーパーカミオカンデでニュートリノ振動を確かめるためにしたこと、それは上方向から飛んでくる大気ニュートリノの数と下方向から飛んで来る大気ニュートリノの数を比べてみること。もしニュートリノ振動が起きているなら、地球の裏側の大気で発生して地球を突き抜けて下から飛んで来るミューニュートリノがタウニュートリノに変わって数が減っているはずなんです(タウニュートリノはスーパーカミオカンデでは簡単には見つけられないので、そのままでは減って見えてしまいます)。その結果、電子ニュートリノは上からでも下からでも数は変わらないのに、上から飛んで来るミューニュートリノに比べて下から飛んで来るミューニュートリノの数が明らかに減っていました。ニュートリノ振動の発見です。

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ちなみに「電子ニュートリノはニュートリノ振動で他のニュートリノに変わらないの?」と疑問に思うかもしれませんが、大気ニュートリノのエネルギーと走る距離(地球の裏側からのニュートリノなので地球の直径分)からニュートリノ振動の確率を計算すると、電子ニュートリノが他のニュートリノに変わる確率と他のニュートリノが電子ニュートリノになる確率がほぼ同じになるため、気にしなくてもいいのです。

 

もうちょっとしっかり知ってみたい方は、Kavli IPMUの広報誌に梶田先生が書かれた記事がありましたのでこれが読みやすいかなって思います。
http://www.ipmu.jp/webfm_send/551

【17.02.23追記:URL変わっていたみたいです】
http://www.ipmu.jp/sites/default/files/imce/J02_Feature.pdf